年の初めの…
         〜789女子高生シリーズ
 


      4



多少は、髪を揺すぶりの、
スライディングもどきで埃を立てのという奮戦ぶりではあれ、
特別見苦しいという訳じゃあない。
むしろ“お見事!”と拍手したくなるよな、
スリリングなスマッシュ&ボレーをご披露下さってたお嬢さんたちではあったが、

 『それじゃあ“羽根つき”ではなかろうに。』
 『あら、そうかしら。』

最近のおませっぷりが またぞろお顔を覗かせたか、
それともお友達を庇いたかったか。
まずはと言葉を返したのは当家のお嬢様で。

 『こういう競技だって、ネットで検索したこともありますもの。』
 『いや、だから…。』

否定はしないさねと、どうどうと娘を宥めつつ。
どっちが勝つかという試合をしているならともかくもと、
そこのところを主張する。

 『本来の羽根つきは、もっと優雅な、
  そう蹴鞠のような楽しみ方をする遊びだからね。』
 『蹴鞠?』

かっくりこと小首を傾げる紅ばらさんの、
あどけない所作へと、ついつい柔らかく微笑み返した刀月殿、

 『そう、輪になって出来るだけ落とさぬよう、
  沢山つないでおれるようにと、相手へ渡す“蹴鞠”と同じ。』

味のあるお声で丁寧に咬み砕いていただいたのへと、
そっかと素直に瞠目するお嬢さんだったので。
何とか気を取り直したか、お父様。
ついでにいい方策も思いついてか、
自分でまずは満足し、うんうんと何度か頷いてから、

 『タツさん。タツさんはいるかね。』

屋敷のほうへと声を掛け、
メイド頭の女性を呼び出すと……






 「いやぁ、こういう展開になろうとは。」
 「………。///////」
 「すみませんね、二人とも。」

それぞれに色違いの振袖に、
濃紺の女袴には実は微妙なグラデーションが入っており。
すらりとした彼女らの肢体をますますのこと、
キュッと引き締めての、見栄えよくしている優れもの。
足元もそれへと見合った、編み上げタイプのハーフブーツに履き代えて。
髪もそれなり、愛らしく結い上げられたという格好、
ちょっとした大正ロマンを演じられそな装いに、
着替えさせられていた三人娘。

 『その恰好ならば、自然と動作にも制限が掛かろうから。』

そーれ・よーいという、のんびりしたテンポでの、
(真っ当な)羽根つきが出来ることだろうよと。
何とか満足なさった、刀月お父様。
こん・ここーんという優雅な追い羽根つきが始まったのへ、
いたく満足なさってのこと、
しばらく にこにこと見物なさっていたものの。
どこかから電話がかかって来たらしく、
お嬢様がたへ会釈をしてからながら、
そのまま屋敷の方へと引っ込んでしまわれたという訳で。

 「一番に感心しちゃったのは、
  こういうお衣装がたんとあったってことですよ。」

着物とも少々勝手の異なる、しかも女性用の袴というもの、
実は始めて履いたらしい平八が、
振袖を左右に引っ張り延ばすと、
まんざらでもないと くるり回って見せ。

 「女性の袴って、ズボンみたいに分かれてないんですね。」
 「道着とも(違う)。」

七郎次のように剣道や武道こそ齧ってないながら、
習い事として実は嗜んでおいでの日舞の中で、
男袴を履く機会があったらしい久蔵が相違点を口にすれば、

 「昔の女性は楚々として歩んだので、
  裾を分けてまでして大股になる必要もなかったんでしょうね。」

妙なところへ感心している二人へ、ふふと微笑った七郎次が言うには、
純和風のおもてなしをする折なぞに、
趣向の一環として、
メイドさんたち全員が、この姿になって給仕して回ることもあるそうで。

 「じゃあ、もう一回続けてみましょうか。」
 「ええ。」
 「…、…、…。(頷、頷、頷)」

ダイナミックな追い羽根つきも面白かったが、(おいおい)
円陣バレーのようにして、何度ラリーを続けられるかを試すのも、結構楽しい。
何度か続けるとコツも判ってくるし、
着物という姿もさして不自由じゃあなくなって来て、

 「そ〜れ。」
 「…あ、ごめんなさいっ。」
 「〜〜〜。(だいじょぶvv)」

長い袂も袴の裾も ものともせずに、優雅な捌きようで羽根を追い、
行ったよぉ、任せて、わあ上手…vvと、
愛らしい笑い声でのはしゃぎようがまた、
冬の穏やかな陽射しの中に響いて暖かく。
今度は先程とは全く別な関心から、
ついつい眸がゆくお屋敷の皆様なのも頷ける。
そんな優美な羽根つきが、だが、
なんでまた、
警視庁へお運びになるよな事態へ相成ったかと言えば………。






BACK/NEXT


 *おかしいな、書いても書いても真相へ辿り着けないぞ。
  今年も引き続くのか、くどいぞ病が。(何やそれ)
  次の章でこそっ!(乞う、ご期待?・笑)


戻る